老年症候群は脳の異常だった?

防げる老化、防げない老化、さらに病的な老化。これらのさまざまな老化現象を一つの括りの中で見ようとする考え方を、私たちは提唱しています。それを「老年症候群」と呼んでいます。

「老年症候群」は、「お年寄りに多くみられ、原因はさまざまであるが治療と同時に介護ケアアが重要である一連の症状、所見」という定義があります。具体的には、めまい、息切れ、転倒、骨折といった急性の疾患、認知症、視力低下、腰痛、呼吸困難といった。慢性の疾患ぺそれに日常生活の活動度の低下、骨粗鬆症、尿失禁といった介護が必要となる疾患に分類しています。

じつは、これらの老年症候群は、「白質病変」と呼ばれる脳の異常との関係がかなり強いということが明らかになってきました。

人の脳を輪切りにして見ると、灰色の部分と白い部分とに分かれていることがわかります。灰色の部分には神経細胞が集まっています。いっぼう、白い部分は、神経細胞に情報を伝える軸索や、神経細胞のサポート役ともいわれるクリア細胞といったものでできています。

この白い部分に異変が起きると、MRI(磁気共鳴断層撮影)という装置を使って脳の中を見る検査で、ぽっぽつと斑点の模様が見られたり、斑点どうし結びついて広い範囲にわたったり、ふだん見られないような異常が見られるようになります。こうした白い部分の異常が、白質病変です。

白質病変は、小規模な脳梗塞や、脳の中を満たして脳神経を保護したりしている、髄液と呼ばれる液のめぐりが悪くなることにより起きるとされています。同じ年齢のご老人でも、白質病変が多くみられる方と、そうでない方がいますから、個人差があるわけです。

白質病変が起きると、どのような老年症候群の症状が起きるのでしょうか。代表的なものは、もの忘れです。白質病変が増えた方の中では、7、8年の間に相当なスピードで認知症が進む場合もあります。

さらに、歩行障害、食欲の低下、頻尿、食べ物・飲み物の咀噌や飲み込みが困難になる嘸下障害などとの結びつきが強いこともわかってきました。ご高齢の方は転びやすくなったり、のどに食べ物をつまらせやすくなったりします。これは、単に足腰の筋肉が衰えた、飲み込む力が弱くなった、というだけでなく、脳の内部で起きている異変が原因かもしれないことが、だんだんと明らかになってきたのです。

私たちは、老年症候群の具体的な症状として55個あげていますが、そのうちの11個が、この白質病変と関係のあることがわかりました。脳の異常は、さまざまな老年症候群にも関係しているのです。



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