100歳長寿者は不思議だらけ

ここまで紹介してきたことは、どちらかというと「わかっていること」や「わかってきたこと」のお話が中心でした。住民参加型の大規模な調査により、老化、病気、生活習慣などの間にどのような関係があるのかが見えてきました。また、分子レベルの研究で、体のしくみもわかってきています。「年だからタクシーに乗りたい」と言っても、「歩けば筋力は取り戻せますよ」と反論されたりして、だんだん年のせいにできない時代になりつつあります。

とはいえ、人間の体には、まだわからないこともたくさんあります。

慶應義塾大学で老年学を研究する広瀬信義先生は、100歳のご老人たちを対象にした研究をしています。広瀬先生は、何人もの長寿者の方と接しているうちに、「100歳の方にはパラドックスがある」と唱えるようになりました。このパラドックスとは「逆説」とも呼ばれ、真実と思われているようなことと逆を示す説のことをいいます。

100歳まで長生きするおじいちゃん、おばあちゃんを見たら、「ああこの方は、病気になりづらい健康な遺伝子を親御さんから引き継いだのだろうな」と思うのがふつうです。ところが、むしろ100歳まで生きる方々は、長寿に不利に働く遺伝子をもっている場合が多いというのです。

なぜ、長生きに不利な遺伝子をもちながら、100歳まで生きることができるのでしょうか。長寿に不利な遺伝子を克服した結果、長寿に有利な遺伝子が力を発揮しているのでしょうか。それとも、長寿に不利な遺伝子を覆い隠してしまうほど、よい生活習慣をされてきたのでしょうか。理由は、まだわかっていません。

ただ、100歳のおじいさん・おばあさんたちをいろいろ調べていえることは、長生きを妨げるような遺伝子を持って生まれたとしても、長生きすることは可能だということです。



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