「壊されては造られ」のバランスが崩れると脆い骨に

いっぽう、外見的にはわからない老いもあります。体の内側の骨や内臓の働きが落ちていくことです。例をあげてみましょう。

まず、肺の働きが衰えていきます。とくに、激しい運動をしたとき、肺に酸素が送り込まれる量が落ちます。日常生活ではなんともないのに、坂道や階段をのぼると、ゼイゼイと息切れを起こしてしまいます。

血液から水分や余分なごみを濾しとっておしっこをつくる腎臓も機能が落ちていきます。若いうちはおしっこを濃縮する能力も高いので、ある程度の時間お手洗いに行かなくてもがまんできますが、年をとると、薄いおしっこが膀胱にどんどんたまりますので、お手洗いが近くなります。

脳と体をつなぐ神経も働きが鈍くなります。その表れとして、目をつぶって片足立ちするという簡単なテストをすると、ご高齢の方はどうしてもふらついてしまいます。こればかりは、どんなに体力があってスポーツマンで鳴らした方でも年齢を裏切れません。 骨の量も減ります。これは目に見えない部分での老いといえますが、その結果として腰が曲がるといった外見的な変化も出てきます。

いろいろあげましたが、骨の量が減る現象は、老化を示すものとしてわかりやすいので、そのしくみを見ていきましょう。

人の一生のうち、30歳前後が最も骨の量が多くなる時期です。それからは、ながらかに量が減っていきます。とくに女性は、45歳前後のいわゆる更年期から、急に減っていきます。

骨は、一度できた骨がずっとそのままそこにあるのではなく、常に「壊されては造られ」を繰り返しています。骨を壊すのは「破骨細胞」という、まさに読んで字のとおりの細胞です。古くなった骨は分解されて、血液に吸収されます。

ですが、ただ壊されるばかりでは、あっという間に骨がなくなってしまいますから、骨を造らなければなりません。こちらは「骨芽細胞」という細胞の役目です。

骨の量が最も多くなる30歳前後までは、壊されるよりも造られるほうが盛んですが、ピークを過ぎると壊されるほうが盛んになり、骨の量が減っていきます。

こうして骨量がどんどん減った結果、骨が体垂をまっすぐに支えられなくなって腰が曲がったり、骨にスポンジのように小さな穴がたくさんできて骨根しょう症になったりします。

ある程度の骨が減ってしまうのはしかたないことですが、だれもが一様に減るわけではありません。運動をしている四収の方が、40歳のときの骨量を保っていることも少なくないのです。 骨の減少を食い止めるにはどうすればよいのでしょうか。

一つは運動をすることです。字宙飛行士は重力のない字宙に長期滞在するとき、筋肉とともに骨を減らさないよう、毎日数時間のトレーニングをします。国際字宙ステーション(ISS)に、日本人字宙飛行士としては最も長い137日間も滞在した若田光一さんは、毎日2時間の筋力トレーニングをしたうえに、骨組しょう症予防の薬を飲んでいました。若田さんは地球に帰還してすぐの記者会見でも元気な姿を見せて関係者を驚かせましたが、過去には8ヵ月の字宙滞在で骨密度が20%も落ちてしまった字宙飛行士もいたそうです。逆にいえば、重力のある地球上では、歩くなどの運動をするだけでも骨量の低下を防ぐことができます。

食ぺ物からカルシウムを摂り込むことも、骨の量を減らさない大切な方法です。日本人は全体的にカルシウムの摂取量が不足しているといわれます。この傾向は、ブラジル人の留学生研究者だったアントニオーカルロスーソーザという人が、日本人の食ぺるご飯と、排泄されるうんちやおしっこに含まれるカルシウムの量を比べるという大変な調査をした結果わかったことです。骨粗し症になった人は、1日800ミリグラムのカルシウム摂取が必要なところ、600ミリグラム以下しか摂っていませんでした。残念ながらソーザは、学位論文などで日本人のカルシウム不足を明らかにした後、飛行機事故で亡くなってしまいました。しかし、牛乳や小魚などの食べ物から、たくさんカルシウムを摂らなければならないことを私たち日本人に教えてくれたのでした。



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